ある現場の会話から
「コミュニケーションが取れない理由は何だと思う?」
ある会社で、50代の上司が部下にそう問いかけた。
部下は40代。少し間を置いて、こう答えた。
「私がもう少し、上司に相談するタイミングを考えて、密に報告すればいいと思います」
その場の空気が、答えよりも先に反応した。
緊張感が走った。
私は思った──この緊張感こそが、対話が生まれない“構造”ではないか、と。
この応答は、本音か?それとも正解探しか?
部下の言葉は、一見前向きに見える。
だがその裏には、評価への不安、正解を探す緊張、関係性の圧が潜んでいるかもしれない。
この場面で起きていたのは、対話の不成立ではなく、対話の設計不足だったのではないだろうか。
データが示す「対話不全の構造」
パーソル総合研究所の調査(2024年)によれば──
- 上司との面談で「本音を話せている割合が2割未満」だった人は51.2%
- チーム内の会議でも52.1%が「本音をほとんど話していない」と回答
- 職場に“本音で話せる相手が1人もいない”人は50.8%
- 職位によって「対話ができている」という認識に大きなギャップがある
→ 一般社員は「本音を出せていない」と感じている一方、上位役職者は「本音で話せている」と認識している傾向が強い
《出典:パーソル総合研究所|職場での対話に関する定量調査》
つまり、対話の場があっても、心理的安全性が確保されるとは限らない。
そして、対話が起きていないことに、上層部が気づいていないことは多い。
このような会話が生まれないために必要なアプローチ
こうした「自責的な応答」が生まれる場面には、いくつかの構造的な要因がある。
それを防ぐためには、次のようなアプローチが有効だと考えている。
🧩 問いの温度を整える
「なぜ(コミュニケーションが取ることが)できなかったのか?」ではなく、「最近、(私=上司に)話しかけやすかった瞬間って、どんな時だった?」と問いかける。問いの温度が変わるだけで、関係性の空気は大きく変わる。
🧩 正解探しを促す空気を避ける
部下が「正解」を探してしまう場面では、上司の問いが“評価”として機能していることが多い。「相談しやすいタイミングって、例えばどんな時になる?」と、設計の視点に切り替えることで、対話が開かれる。
組織づくりへの応用
こうした事象の構造を読み解きながら、企業ごとに異なる社風や従業員の特性に合わせて、「対話が自然に起きる組織づくり」を支援しています。
問いの温度、関係性の設計──
それらを整えることで、相談が“起きる構造”をつくる。
それが、これからのマネジメントに必要な設計だと考えています。
あなたの組織では、「正解を探す応答」が生まれる場面に、どんな問いを置いていますか?
