「AIで効率化しよう」とは言うけれど…

「AIで効率化しよう」とは言うけれど…

最近、「AIを使え」「AIで効率化しろ」という言葉をよく耳にするようになった。それはまるで、AIを使うことが“正しい姿勢”であるかのように語られる。
しかし、そう言う人に限って、実際にはAIを使いこなしているとは言いがたい。たとえば、AIが生成した文章やアイデアを、そのまま自分の意見として共有してしまう。一見すると、AIを活用しているように見えるが、そこには対話も編集もない
つまり、AIとの関係性が浅いのだ。

こうした使い方は、特に管理職層に多く見られる
忙しさの中で、AIを「便利な答えメーカー」として扱ってしまう。
だが、本当にAIを使いこなすとは、AIが投げかける問いに、自分の思考で応答し、語りを編み直すことではないか。

だからこそ、今あらためて考えたい。
「AIを使う」とは、どういうことなのか。
そして、その使い方の語りが、私たちの未来をどう形づくるのか。

部署によって、AIの使い方はまったく違う

企業の中で、AIの使い方は部署によって大きく異なる。
それは単に業務内容の違いだけではなく、語りの構造が違うからにほかならない。
たとえば──

  • 管理部門では、正確性や再現性が重視されるため、AIは「効率化の道具」として使われる。
  • 一方、企画部門や営業部門では、柔軟性や即興性が求められるため、AIは「創造のパートナー」として扱われる。

この違いは自然なことである。
しかし、ここで見落としてはいけないのは、効率化だけでは未来はつくれないということだ。

管理部門にも、変革の語りが必要

「管理部門は効率化だけしていればいい」
そういう考え方が根強く残っている組織も少なくはない。
でも、それではAIは単なる自動化ツールになってしまう。
本来、AIは業務の“意味”そのものを問い直す力を持っている。
たとえば──

  • この業務は、なぜ存在しているのか?
  • もっと良いやり方はないのか?
  • そもそも、これは人間がやるべきことなのか?

こうした問いを投げかけることで、AIは業務の再設計を促す。
そして、管理部門がこの問いに応答できるかどうかが、組織の進化を大きく左右する。

変革を語れない管理は、やがて停滞を生む。
それは、企業全体の成長を妨げることにもつながる。

この構造は、国家レベルにも通じている

実はこの「効率化 vs 創造」という構造は、国家レベルのAI思想にもつながっている。

  • アメリカは「自由と創造」を軸に、AIを個人の可能性を広げる存在として語る。
  • 一方、中国は「秩序と効率」を軸に、AIを社会全体を最適化する道具として位置づける。

国家レベルでは、この語りの違いが譲り合えない対立を生んでいる。
しかし、企業や個人レベルでは、語りを重ね直すことが可能だ。
つまり、語りの設計によって、未来の選択肢は広がるのだ。

語り方ひとつで、AIの価値は変わる

AIをどう使うかは、単に「どのツールを選ぶか」ではない。
それは、そのツールをどう語るか、どう位置づけるかという選択でもある。たとえば──

  • 管理部門が「効率化のための道具」としてAIを使うだけでは業務は早くなるかもしれないが、意味は深まらない。しかし、「この業務は本当に必要か?」という問いを持てば、AIは業務の再設計を助ける存在になる。
  • 企画部門や営業部門が「アイデア出しの相棒」としてAIを使うのは自然だが、そこに「再現性」や「検証」の視点を加えることで、AIは実行可能な戦略を支える存在になる。
  • そして、企業全体としても、「AIは流行だから使う」ではなく、
    自分たちの価値観や働き方に合った使い方を設計することが重要となる。

AIをどう語るかによって、組織の未来は変わる。
その語り方が、社内の信頼をつくり、進化の方向性を決めていく。

問いを持つことから、未来は始まる

AIをどう使うか──
それは、私たちがどんな価値観を選び、どんな問いを共有するかということだ。

効率化と変革。
管理と創造。
国家と企業。

そのあいだで、私たちは何を信じ、どう動いていくのか

その問いを持つことから、未来は始まる。