なぜ日本企業で管理職が育たないのか-昭和的構造と心理的再設計から考えるマネジメント不全-

「今の若者は…」に潜む前提を疑う

まず最初に明確にしておきたいのは、ここで語る内容がすべての企業に当てはまるわけではないということ。若手が活躍し、管理職が機能し、組織が健全に回っている企業も当然存在する。しかし、そうした企業がある一方で、マネジメント層が育たない構造を抱えた企業も確かに存在している。本稿では、そうした企業の“構造的な背景”に焦点を当てる。

日本企業において、管理職が育たない理由は、単なるスキル不足ではない。
それは、昭和・平成を生き抜いた創業者や経営者の影響が、組織の深層にまで染み込んでいるからではないだろうか。
彼らは、厳しい競争の中で一から会社を築き上げた強いリーダーであり、その姿勢は尊敬に値する。しかし、その後継者候補として管理職に就いた人々は、年功序列の中で“しきたり”や“マナー”を守ることに最適化され、自分の考えを持たず、上層の方針に従うことが正義とされる構造の中で育ってきた。
その結果、彼らは組織論やマニュアルに依存し、それを“聖書”のように扱い、行動の原理原則ではそれに従うため、自ら考えることはしなくなった。このため、教育もマネジメントも丸投げするような姿勢が定着した。これを見た若者がそのような管理職に魅力を感じないのは自然なことだ。
しかし、ここで忘れてはならないのは、そのような管理職自身もまた、苦悩しているということ。
「なぜ若者はついてこないのか」「どうすればマネジメントできるのか」——彼らなりに悩み、模索している。その苦悩は、彼らが“悪意なく”その構造に染まってきたことの証でもある。

だからこそ、まず必要なのは、彼ら自身が“なぜ自分はこうなったのか”を理解することにある。
思考がそうなってしまったプロセスを言語化し、構造的に捉え直すこと。
それが、マネジメント不全を解きほぐす第一歩になる。

心理的な再設計-マネジメント不全をほどくための3つの視点-

これらマネジメント不全を解決するために、制度や仕組みを整えることはもちろん重要だ。しかし、制度だけでは変わらないものがある。それは、管理職自身の“思考構造”と“自己理解”の深度だ。
心理学的な視点から見れば、こうした構造的な思考の癖は、意識的な努力によって再設計することが可能である。
以下の3つの視点によって、管理職が自分自身を見つめ直し、マネジメントの本質に近づくための実践的な道筋となる。

  1. メタ認知の促進
    まず必要なのは、自分の思考や判断の癖を客観的に捉える力を養うことである。
    「なぜこの場面で部下に任せられなかったのか」「なぜマニュアルに頼ってしまったのか」——そうした問いを日常的に持ち、言語化することで、自分の“構造的な反応パターン”に気づくことができる。
    これは、単なる反省ではない。
    自分の思考を“外から見る”ことで、初めて「自分が何を恐れているのか」「何に依存しているのか」が見えてくる。このメタ認知の力が、マネジメントの質を根本から変えていく。
  2. ロールモデルの提示
    次に必要なのは、「自分はどんな管理職になりたいのか」を明確にすること。理想像がなければ、行動の方向性も定まらない。
    多くの管理職が迷うのは、“なりたい姿”が言語化されていないからではないだろうか。
    海外企業の多くでは、管理職に明確な裁量と評価軸が与えられており、「目指すべき姿」が組織的に設計されています。日本企業でも、尊敬される管理職像を可視化し、共有することで、行動の指針と“なりたい自分”が結びつく構造をつくることができるのではないだろうか。
  3. フィードバック環境の再設計
    最後に必要なのは、部下との認識のズレを可視化し、それを改善につなげる環境の整備である。
    人事評価制度は、単なる点数付けではなく、行動変容を促す“構造の装置”として設計されるべきだ。
    部下からのフィードバックを受け取る場が制度化されていれば、管理職は自分の振る舞いがどう受け止められているかを知ることができる。そのフィードバックをもとに改善を試み、再評価を受ける——この循環が、組織の意味設計と信頼構造を支える基盤となる。
    フィードバックは“批判”ではなく、“構造の調整信号”として考え、扱うべきである。そのような環境が整えば、管理職は孤立せず、組織全体が“育つ構造”へと自ずと変化していく。

構造を理解することから、すべてが始まる

マネジメントとは、命令ではなく“構造の翻訳”と考える。
そしてその翻訳は、まず自分自身の構造を理解することから始まる
管理職が自分の思考の癖や育ってきた構造を見つめ直すことで、組織は確実に変わる。構造の言語化から始めることで、マネジメントの再設計は必ず可能になる。

もし、この記事の内容が貴社の課題と重なるようであれば、是非ご相談ください。