なぜ、気づきは定着しないのか?
企業研修でSWOT分析や5C分析などのフレームワークを活用する機会が増えている。
管理職や一般社員が自社の強みや課題を整理し、現状を言語化する時間は、確かに有意義だ。
しかし、研修の最後にこんな言葉が交わされる場面を、私は何度も見てきた。
「勉強になりました。今後の業務に活かしていきたいと思います。」
その言葉のあと、分析結果が再び開かれることはほとんどない。
気づきはその場限りで終わり、業務や戦略に反映されることは稀である。
なぜ、気づきは定着しないのか。
なぜ、あれほど真剣に取り組んだ分析が、現場に届かないのか。
フレームワークは“入口”でしかない
SWOTや5Cは、組織の状態を可視化するためのフレームワークである。
ただし、それらはあくまで「気づきの入口」であり、戦略の出口ではない。
戦略に昇華するには、そこからの構造化・翻訳・業務設計が不可欠と考えている。
つまり、「この気づきをどう業務に落とすか」「誰が使うか」「どの場面で活かすか」を設計する力が求められる。多くの現場では、そこを担える人材が不足しているように思える。
フレームワークを使うことはできても、それを事業戦略や経営判断に変換するところまでは踏み込めないのだ。
気づきは、翻訳されなければ使われない。
設計されなければ、場に届かない。
実装まで設計する視点
研修の成果を“その場限り”で終わらせないためには、業務への接続設計が必要だ。
たとえば──
- 研修で出た分析結果をもとに、週次会議で改善アクションを提案する。
- 研修参加者の代表が、重要ミーティングでその結果を発表し、改善案を提示する。
- 全社員の前でプランを発表する場を設け、実行を促す。
こうした流れを設計することで、フレームワークは“使われるもの”にカタチを変える。
必要に応じて、Wevoxやカオナビなどの社内向け診断ツールを導入し、継続的なモニタリングを行うことも可能となる。ただし、ツールの導入はあくまで気づきの継続と可視化のための手段であり、最初の“翻訳”がなければ意味を持たない。
構造を翻訳する者として
私はこれまで、不動産業界向けのMAツールをベンダーとして提供する立場から、営業プロセスや組織構造を外部から見てきた。
一方で、社内の立場として、勤怠管理システムや財務一元管理システムの導入にも携わってきた。
その中で見えてきたのは、どんなに優れたツールやフレームワークでも、“組織の構造や文化にフィットしなければ、定着しない”という現実だった。
だからこそ、私は、
「構造を翻訳する立場」として、
そして「デザイナーとして表現する立場」として、
ツールや考え方を組織の中に浸透させる支援をしている。
単なる導入支援ではなく、
その意味や使い方を“組織の言葉”に置き換え、
伝わる形に整え、使われる場面を設計する。
研修で得た気づきを、正式な会議の場に提出する資料にする。
全社員の前で発表するための構成を設計する。
その資料が、組織の意思決定を動かす“言葉”になる。
気づきを戦略に変える設計力
フレームワークは出発点。
そこから戦略に昇華するには、翻訳と設計が必要。
そして、それを支える人がいれば、研修は“組織を動かす起点”になる。
気づきが、提案になり、提案が、実行になる。
その流れを設計することこそが、組織診断の本当の価値だと考えている。
あなたの組織では、研修の“気づき”が、戦略に昇華されていますか?
