知り合いのコンサルタントが「ドイツはもう持たない。EUも今の形を維持できないかもしれない」と語った。根拠は、移民の影響でドイツ料理店が減っているという曖昧な話だった。この発言には、EUはドイツが中心で支えているという前提がある。しかし制度の実態を見ると、この前提は正確ではない。
EUは単一の覇権国が支配する仕組みではなく、複数の中心が並存する多中心構造で動いている。財政はドイツ、外交はフランス、対ロシア政策は東欧──分野ごとに中心が異なる。加盟国間の交渉と合意形成が前提であり、ドイツの弱体化がEU崩壊に直結するわけではない。
ドイツ経済は低成長が続いているが、失業率は低く、経常収支も黒字で、崩壊とは程遠い。構造転換の負荷を抱えた局面にあるだけだ。
では、なぜ「EU崩壊論」は繰り返されるのか。理由はデータではなく、物語の構造にある。複雑なEUを「ドイツ中心の政治体」という単純な物語に置き換えると理解しやすく、繰り返されやすい。欧州内部でも危機のたびに崩壊論が語られてきたが、そのたびにEUは制度を調整し、むしろ統合を深めてきた。
EUの本質は「脆弱性」ではなく、危機を通じて自らを再編する変容能力にある。ドイツの停滞も、東欧の台頭も、EUが形を変えながら続いていく過程の一部だ。
EUの未来を考えるとき、問うべきは「崩壊するかどうか」ではなく、どのように変化し続けるのかという視点である。
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なぜ「EU崩壊論」は繰り返されるのか、そして何を見落としているのか。
